練習ワーク2

情報・知識をアニメにする(1)

三題噺で、情報・知識を物語化、そしてアニメにする

概略

  • 本ワークの対象:初心者向けの「練習ワーク1」修了者、コマ撮りの基本練習修了者など、できる限り”初歩的なアニメつくり”を体験した人
  • 目的:課題を物語化してからアニメにする術を学びます。本格的なアニメーテッドラーニングとなります。
    • 課題を、三題噺(さんだいばなし/3つのお題から物語をつくる)を用い、物語プロットに置き換えて、アニメにします。
      • 本ガイダンスでいう「課題」とは、学校の授業や行事、課外学習、趣味、クラブ活動や地域・社会活動などでの学びや体験、それらのリサーチワークで得た情報や知識、そして学習者のアイデアなど、学習者が「伝えたいコト」です。
  • 活動の流れ
  • 1.課題を、「三題噺」と「物語プロット」に置き換えます
  • 2.オブジェクト(キャラクター、小道具、背景)を用いてコマ撮りします。物語プロットに合うオブジェクトを選びます。あるいは、シンプルな形や図様でオブジェクトをつくります。
  • カメラの置き方と撮影:カメラの置き方の違いによる、2種類のコマ撮り法(撮影法)を学びます。実際の授業やワークショップではどちらかの撮影法を選んでください。
    • カメラ(スマホ、タブレット等)を横置きして、オブジェクトを上から撮影します。
    • カメラ(スマホ、タブレット等)を立てて置き、オブジェクトを横から撮影します。
  • チーム作業:チーム(3~5名程度)でアニメをつくります。チーム作業では学習者の主体性を優先して、チーム内の「役割」はファシリテーターが分担を決めずに、学習者の主体性、チームの合意に任せます。
  • 役割とは、アニメつくりに必要な仕事です。登場人物(キャラクター)を操る仕事は「役者」に相当します。物語プロット作成や撮影、演出は「監督」に相当します
    • 役者として、主観的に、キャラクターを通じて、物語化した課題に参加する
    • 監督として、客観的に、課題を俯瞰しつつ、アニメをつくり上げる
  • ふりかえり:完成したアニメーションは全員で鑑賞し、ふりかえりをします。
  • 学習者の対象年齢:小学4年生(10歳)以上。
  • ワークの時間
練習ワーク2のイメージイラスト 練習ワーク2のALライフサイクル

達成目標

  • 課題をアニメ(視覚言語)に置き換える術を学ぶ。
    • 1.課題を物語化する:三題噺を用いて物語プロットにしてから物語化する。
    • 2.オブジェクト(キャラクターなど)を用いて、物語をアニメにする。
    • 3.対象の観察と考察、対象に「なりきる」ことを練習する。
  • カメラの置き方が異なるコマ撮り2種を学ぶ:
    • カメラ横置き、上から撮影
    • カメラ立てて置き、横から撮影
  • チーム作業でアニメを完成させる
    • 主体的に役割に取り組む。
    • 各人が役者と監督の二役を担い、課題の主観的ならびに客観的な解釈と伝え方を学ぶ。
    • チームワークとコミュニケーションを学ぶ。

道具を準備する<準備するもの>

  • カメラと撮影台
  • ブレインストーミング用:大きい白紙(模造紙など)、粘着付箋(7~8㎝四方の白紙や色紙、マスキングテープでも代用できる)、またはホワイトボード、水性カラーマーカー
  • 意見のまとめ用:白紙、または教材「ブレスト話し合いの記録シート」
  • キャラクター、小道具、背景は作業時間節約のために事前に準備する。
    • お題に関連する/連想するモノ
    • または、〇□などシンプルな形の白紙、立体的なモノ(高さ5㎝くらいの白い紙コップ、白い消しゴム、トイレットペーパー芯など)に図案を描き、キャラクターや小道具とし、背景は画用紙などに描く
  • 筆記具、文房具
  • AV機器(モニターと音響機器):スマホ、タブレットあるいはパソコンをモニターに接続し、完成したアニメを見る

ワークの手順

  • ① チーム分けする:ファシリテーターが学習者を1チーム3~5名に分ける)
  • 工程解説 ワークを計画する、チームをつくる>>ダミー
  • ②お題(キーワード)を決める
  • 課題が小説や長文の資料、あるいは広範なテーマを扱う場合でも、主題を絞ると物語化、具象化、アニメーションへの置き換えがやりやすくなる。
  • 本ワークでは、主題を絞るために、課題からお題(キーワード)を選んで物語プロットをつくる「三題噺」をおこなう

初めてのワークならば

  • ファシリテーターがお題(キーワード)を決める。
    • ●お題は3つ以内とする。
    • ●お題として、課題にある単語/短文(一行文)/写真/イラストなどを選ぶ。
    • ●学習者の経験度合や学齢に応じたお題を選ぶ。「だれが、いつ、どこで(/なにを)」に相当するお題なら物語化しやすい。
    • ●学習者がイメージしやすいお題を選ぶ。課題がフィクションで学習者の想像を膨らませるような内容なら、脈絡のないお題でもよいだろう。
    • ●全員に同じお題でもよい、あるいはチームや個人別にお題を変えてもよい。

ワークの経験を重ねてきたら

  • お題(キーワード)はファシリテーターが選ぶだけでなく、学習者が話し合いで決めるとよい。
    • ●ブレインストーミング(ブレスト)の手法などを使いながら、キーワードを書き出し、関連するキーワードをグループ化する。小グループから大グループへボトムアップしながら整理して、最終的に3つくらいのグループにまとめる。
    • ●課題の“なに”を伝えるか?、「伝えたいコト」を考えて、それに関連するお題を選ぶ。
    • ●お題として、課題にある単語/短文(一行文)/写真/イラストなどを選ぶ。
    • ●全員に同じお題でもよい、あるいはチームや個人別にお題を変えてもよい。

本ワークの練習用課題

  • 本ワークでは、<物語化>→<具象化>→<アニメ化>を理解していただくために、練習用課題を使い各工程を解説します。この練習用課題は新聞サイトに掲載されたルポルタージュで、学齢は中学生以上を対象とするのが相当と思われますので、あくまで参考となさってください。実際のワークでは学習者の学齢(年齢)や経験、ワークの目的等に沿って、ファシリテーターがご設定ください。
  • 練習用課題
  • 気候変動、マイクロプラステックによる海洋汚染と海洋生物の危機、アートと科学を融合させる、Tara Océan 財団(タラ オセアン財団)の「タラ号プロジェクト」です。
  • 朝日新聞 2030 SDGsで変える」に掲載された記事をアニメにします。
  • 課題掲載のウェブサイト
  • アイコン写真:航海中のタラ号 ©Sacha Bollet / Fondation Tara Océan
  • 関連記事のウェブサイト
  • アイコン写真:タラ号で大小島真木さんが制作した「私たちの海と森の肺」©Noëlie Pansiot / Fondation Tara Océan
  • ③三題噺から物語プロットをつくる
  • チームで、お題をつなぐアイデアを書き出す(イラストで描いてもよい)。複数書き出す。アイデアをいくつか選んで物語プロットにしてもよい。
  • だれが、いつ、どこで(/なにを):お題が「だれが、いつ、どこで(/なにを)」に当たるなら、つなげて物語プロットにする。お題だけでは「だれが、いつ、どこで(/なにを)」が足りなければ、それらを加えて物語プロットにする。
    • お題を一度にまとめられない時:2つのお題をつないでから、3つ目のお題を加えるというように、少しずつ連結する。ALファシリテーターは適宜アドバイスする。
  • 起承転結(始まり→展開→結末):起承転結をつけてお題をつなげる。
  • なりきり、観察と調査:「だれ(キャラクター)」の気持ちや行動を、学習者が想像しながら考え、話し合う。
    • 観察と調査:キャラクターに近いヒトやモノを観察する。書籍、写真、映像などの資料を探す。図書館やインターネットの利用、周囲の詳しい人に聞き取りする。
    • 主人公(キャラクター、モノ)になったつもり:主人公やオブジェクトなどの動きや変化を表現するには、学習者が自ら体験や再現すると理解が深まり、具現化しやすくなる。時間が許すせば、学習者の全身と五感を使って「~なったつもり」を取り入れる。
  • すこし不思議な物語:アイデアのつながりが不整合でも、現実に起こりえないことでも良い。学習者が伝えたいコトを、より効果的に伝えるという意味で、ファシリテーターは「すこし不思議なくらいな物語が見る人の関心をひく」というようなヒントも出してみよう。
  • セリフ、ナレーション、ト書き・字幕テロップ:言葉の情報を物語プロットに応じて加える。
    • ファシリテーターは、アニメにセリフ、サウンド(環境音、効果音)、音楽などを入れられることを伝える。
    • ファシリテーターが学習者の学齢や経験度合に応じて、また作業時間を勘案して、キャラクターの動き(変化、変形)以外の情報を言葉で加えるか、言葉の分量をどのくらいにするか指示する。
  • ④キャラクター、小道具、背景を決める
  • ファシリテーターはキャラクター、小道具、背景にするオブジェクトを事前に準備する
  • お題に関連するモノ/連想するモノ(絵や写真、小さな人形や模型など)
  • あるいは、〇□などシンプルな形の白紙や、立体的なモノ(高さ5㎝くらいの紙コップ、白い消しゴム、トイレットペーパー芯など)に図案を書き加えさせる
  • 背景はなくてもよい。背景つけるならば、作業時間を勘案して、つくり込み具合を決めるよう、ファシリテーターはアドバイスする。
  • ⑤撮影
  • チームで撮影する。キャラクターの気持ちや行動を考え、キャラクターなどを動かしながらコマ撮りする。
  • 役割分担:ファシリテーターは撮影に役割分担(監督・演出、カメラのシャッターを押す人、キャラクターを動かす人など)があることを伝える。役割を振り分けるかはチームで決める。ファシリテーターは、参加者全員が参加意識をもてるように見守り、必要に応じて調整する。
  • なりきり:撮影の前や途中で、キャラクターの動き(変化、変形)を研究するために、「なりきり」アクティビティをおこなってもよい。
    • ロールプレイ:学習者がキャラクターやオブジェクトになって演じてみる。その動きを参考にしながらアニメをつくる。
    • ティーチャー・イン・ロール:ファシリテーターがキャラクターになって演じ、学習者をフィクションの世界に招き入れる。
  • 音入れ(オプション)
    • 録音と合成:アプリで録音と映像への合成ができる。
    • 弁士:アニメには音を入れず、上映時に学習者が生音でナレーション、セリフやサウンドをつける。
    • 作業時間や学習者の経験度合に応じて、音入れの方法、入れる音の種類や度合を決めるよう、ファシリテーターはアドバイスする。
  • ⑥参考アニメーション

参考アニメ カメラ横置き、上からの撮影

https://www.youtube.com/watch?v=zcDbLMRpbeI&feature=emb_logo

参考アニメ カメラ立てて置き、横からの撮影

https://www.youtube.com/watch?v=zcDbLMRpbeI&feature=emb_logo
  • ⑦上映

撮影が終わったら、全員でアニメを見る。
音入れなしの場合、オプションとして、アニメを映しながら、撮影した学習者がオノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語など)をその場で加えても良い。

  • ⑧ふりかえり

上映後に全員でふりかえりをおこなう。
全体ふりかえり後、できるだけチームに分かれ、全体ふりかえりで得た感想やフィードバックを確認しながら、チームのふりかえりをおこなう。

  • ⑨アニメーションのデータ保存、発表・配信
  • 完成したアニメを動画ファイルに変換して保存する。アプリの機能で自動的に変換できる。
  • 完成したアニメを発表会などで上映したり、動画共有サービス(YouTubeなど)にアップロードして公開する。

指導のポイント

  • 本練習ワークでは、学んだこと、知識や情報などから伝えたいコト(キーポイント)を物語プロットに整理して、そのプロットをアニメーションにすることを学びます。
  • 三題噺は3つのキーワード(お題)を物語プロットにする練習で、複雑そうな知識や情報であっても、伝えたいポイントを3つに絞ることで、アニメーションに置き換えやすなります。
  • 練習ワーク1で学んだ「起承転結」を用いながら、伝わる物語・伝わるアニメーションをつくることを、学習者に意識させます。
    • アニメは時間の経過を、オブジェクトの動きや変化・変形として、視覚的に表現をすることで物語が成立することを学びます。
  • 全身と五感を使って対象観察と考察をしながら、「なりきる」。アニメで何かを伝えるには、全身と五感で対象の対象を観察し、表層的なあり方や動きだけでなく、裏に隠れていることや内面・気持ちを感じたり、想像しながら、その身体感覚をキャラクター/オブジェクトの動きに置き換えることです。
  • 観察・考察の結果を次のように表現します:
    • 文字の情報等を具象化、視覚言語化する。
    • 物語をキャラクター/オブジェクトの動きに置き換える
  • 学習者が役者と監督の二役を担います:
    • 役者として、キャラクターを通じて、物語化した課題に参加する
    • 監督として、客観的に物語(課題)を俯瞰しつつ、アニメをつくり上げる
    • 誰しも、最初から2つの「役割」を完璧に担うことはできません。回を重ねるごとに学習者が主観と客観の見方を身に着けることがたいせつです。これこそ、アニメ/映像制作を学びに取り入れる効果のひとつです。
    • ファシリテーターは学習者が「参加した」という意識、さらにそれぞれの学齢や技能と精神発達などの度合いに応じて主観と客観の見方を身に着けられるよう、必要に応じたアドバイスや学習者間の調整をします。
  • アニメーションの設計と制作の工程の基礎を学びます:情報などを時間軸を持つ物語へ置き換えること、キャラクターや小道具などのオブジェクトの役割と簡易的な作成、背景やレイアウトの役割、セリフやサウンドなどの効果、完成アニメーションの上映とふりかえり。
  • 文字偏重から、視覚言語を使って、創造的で多様なコミュニケーションへ:物語つくり、アニメーション撮影、ふりかえりはチームでおこない、話し合いと共同作業でのコミュニケーション力の向上を目指します。

本ガイダンスは、アニメーテッドラーニングの日本における普及促進を目的とし、一般社団法人アニメーテッドラーニングらぼと文化学園大学 文化・住環境学研究所との共同研究で作成されました。アニメーテッドラーニングの普及促進やその実践のためならば、著作権保持者の許可なくこのガイダンスのコピーや転載ができます。その際は出典(本サイトURL等)と下記のコピーライトを明記してください。

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