練習ワーク3

情報・知識をアニメにする(2)

4画面物語で、情報や知識をアニメにする

アニメの設計をしてから、設計図に基づいてアニメをつくる

概略

  • 本ワークの対象:「練習ワーク1」と「練習ワーク2」修了者など、初歩的なアニメ制作を数度経験した初・中級者向けです。
  • 目的課題(伝えたいコト)をアニメにして、そのアニメを発表・発信します。
    • 課題とは、学校の授業や行事、課外学習、趣味、クラブ活動や地域・社会活動などの学習や体験、それらのリサーチワークで得た情報や知識、そして学習者のアイデアなど、学習者が「伝えたいコト」です。
  • 活動の流れ:実際のアニメ制作の手順でワークをおこないます。
    • プリプロダクション(課題の物語化、アニメの設計)→コマ撮り→ポストプロダクション(音入れ)→上映・配信、ふりかえり
  • プリプロダクション-課題を4画面の具象で物語化します。
    • 物語プロットで整理:アニメの画面にする前に、ワーク2で練習した三題噺の物語プロットで課題を整理すると、「伝えたいコト」を物語にしやすくなります。
    • 4画面物語で図案化:物語プロットを4つの画面に分け、それぞれの画面にキャラクター、小道具、背景等を描き、課題を図案化します。課題をアニメの連続性、つまり時間の経過と変形・変化(動き)に置き換え、具象化します。
    • 描画の巧拙に問いません。文字の情報を視覚言語へ置き換えることを学びます
  • プリプロダクション-アニメの設計:4画面物語をシーンとカットに展開し、アニメの設計図である「ストーリーボード」をつくります。
    • ストーリーボードは「アニメの設計図」です。
    • アニメにするために4画面物語を展開して、物語の時間軸に沿ってキャラクターの動きやセリフ、小道具や背景とその配置、音楽やサウンド(効果音、環境音)などを決め、記録します
    • チーム全員がストーリーボードを共有し、同じ方向を向いて作業する指針となります。
    • ●物語の展開、キャラクター、小道具、背景、サウンド、セリフなどを決めます。
    • ●ワークシート「ストーリーボード」、「キャラクターのデザイン記録シート」、「背景等のデザイン記録シート」に記録します。
  • コマ撮りと音入れ:ストーリーボード(アニメの設計図)に沿って、全員でコマ撮りします。
    • カメラを立置きするか、横置きするかは、物語の内容、表現したいことに応じて決めます
    • 音入れ:必要に応じて、あるいは学習者の希望で、セリフやサウンドを録音して動画と合成します。コマ撮りアプリの録音機能を用いると初心者でも動画にシンクロする音入れができます。
  • チーム作業:チーム作業(3~5名程度)で作業します。チームで配役や役割分担をある程度決めます。ファシリテーターは全員が「参加した」という意識を持つよう、必要に応じたアドバイスや学習者間の調整をします。
  • ふりかえり:完成したアニメーションは全員で鑑賞し、ふりかえりをします。
  • 学習者の対象年齢:小学4年生(10歳)以上。
  • ワークの時間
練習ワーク3のイメージイラスト 練習ワーク3のALライフサイクル

達成目標

  • 4画面物語:学習者が「伝えたいコト」(以下、課題)を4画面物語で物語化、図案化する。
  • アニメの設計:「ストーリーボード」をつくり、それに沿ってアニメを作成する計画性と遂行力を学ぶ
  • 2種のカメラの置き方と撮影法から、作成するアニメに適した方を選ぶ。
    • カメラを横置きして、上から撮影
    • カメラを立てて、横から撮影
  • チーム作業でアニメを完成させ、目標を達成するためのチームワークとコミュニケーションを学ぶ

道具を準備する<準備するもの>

  • カメラと撮影台
  • ブレインストーミング用:大きい白紙(模造紙など)、粘着付箋(7~8㎝四方の白紙や色紙、マスキングテープでも代用できる)、またはホワイトボード、水性カラーマーカー
  • 意見のまとめ用:白紙、または教材「ブレスト話し合いの記録シート」
  • キャラクター、小道具、背景は作業時間節約のために事前に準備する。
    • お題に関連する/連想するモノ
    • または、〇□などシンプルな形の白紙、立体的なモノ(高さ5㎝くらいの白い紙コップ、白い消しゴム、トイレットペーパー芯など)に図案を描き、キャラクターや小道具とし、背景は画用紙などに描く
  • 筆記具、文房具
  • AV機器(モニターと音響機器):スマホ、タブレットあるいはパソコンをモニターに接続し、完成したアニメを見る

ワークの手順

  • ① チーム分けする:ファシリテーターが学習者を1チーム3~5名に分ける)
  • 工程解説 ワークを計画する、チームをつくる>>ダミー
  • ②チームで課題を決める
  • 学校の授業や行事、課外学習、趣味、クラブ活動や地域・社会活動などの学習や体験、それらのリサーチワークで得た情報や知識、そして学習者のアイデアなど、学習者が「伝えたいコト」を課題とする
  • 学習者が課題を決めても、ファシリテーターが課題を提示してもよい。

本ワークの練習用課題

  • 本ワークでは、<物語化>→<具象化>→<アニメの設計>を理解していただくために、練習用課題を使い各工程を解説します。この練習用課題は新聞サイトに掲載されたルポルタージュで、学齢は中学生以上を対象とするのが相当と思われますので、あくまで参考となさってください。実際のワークでは学習者の学齢(年齢)や経験、ワークの目的等に沿って、ファシリテーターがご設定ください。
  • 練習用課題
  • 気候変動、マイクロプラステックによる海洋汚染と海洋生物の危機、アートと科学を融合させる、Tara Océan 財団(タラ オセアン財団)の「タラ号プロジェクト」です。
  • 朝日新聞 2030 SDGsで変える」に掲載された記事をアニメにします。
  • 課題掲載のウェブサイト
  • アイコン写真:航海中のタラ号 ©Sacha Bollet / Fondation Tara Océan
  • 関連記事のウェブサイト
  • アイコン写真:タラ号で大小島真木さんが制作した「私たちの海と森の肺」©Noëlie Pansiot / Fondation Tara Océan
  • ③物語プロット:課題を物語プロットにする
  • だれが、いつ、どこで、なにを、どのように」、「起承転結(始まり→展開→結末)」を話し合い、物語プロットを書き出す。
  • 時間があれば、複数のプロットを考え、アニメにするものを選ぶ。
  • ④4画面物語:物語プロットから主要なシーン(場面)を4つ選び、4画面にする
  • 課題を時間軸を持つ物語として図案化する。
  • 課題をアニメの連続性(時間の経過と変形・変化)と動きに置き換える。
  • 物語プロットの主要な場面を決めて、4つの画面に具象化する。
  • 各画面にキャラクター、小道具、背景等をラフに描き、図案化する。
  • 描画の巧拙は問わず、文字の情報を視覚言語へ置き換えることを練習する。
  • アニメは時間の経過を、オブジェクトの動きや変化・変形という視覚的な表現をすることで物語が成立する。
  • なりきり、観察と調査「だれが(キャラクター)」の気持ちや行動を、学習者がキャラクターの立場を想像しながら考え、話し合う
    • なりきり:フリーズ・フレーム(静止画/画面にしたいイメージを身体を使って表現してみる)。
    • 観察と調査:キャラクターに近いヒトやモノを観察する。書籍、写真、映像などの資料を探す。図書館やインターネットの利用、周囲の詳しい人にヒヤリング。
  • ⑤アニメを設計する、ストーリーボードをつくる
  • 4画面の図案をアニメの設計図「ストーリーボード」に展開する。
  • 本練習ワークでは、ストーリーボードが台本(シナリオ)にもなり、アニメの設計図として、アニメにする項目を書き出す/描き出す。
  • ストーリーボード(アニメの設計図/完成図)はチーム全員が共有し、同じ方向を向いて作業する指針となる。
  • 計画を遂行する練習として、ストーリーボードに沿ってアニメを作成するよう、ファシリテーターはアドバイスする。
  1. 4画面のそれぞれシーン(場面)で動きなどを変えるカット(画面)を考え、アニメの展開を決める。アニメにする時間は、初心者ならば数十秒~1分以内が適当。
  2. カットのキャラクター、小道具、背景、セリフ、ナレーション、ト書き、サウンド(効果音、環境音)、音楽などを決め、アニメの設計図である「ストーリーボード」に書き込む。
  • ⑥キャラクター、小道具、背景を決める

既存オブジェクトを使うか、オリジナルで作成するか、その折衷にするかは、作業時間や制作費の有無を考慮して、ファシリテーターが決める。

  • コマ撮りのカメラの立置き、横置きを選ぶ。
  • オブジェクトの素材を決め、作成する。
    • 簡易的には、〇□などシンプルな形の白紙や、立体的なモノ(高さ5㎝くらいの紙コップ、白い消しゴム、トイレットペーパー芯など)に図案を書き加えてもキャラクターなどの代用ができる。
  • 背景を用いる:所定時間内に終わるように時間管理が重要となる。作業時間次第で背景のつくり込み具合を決めるよう、ファシリテーターはアドバイスする。
  • ⑦撮影:ストーリーボードに沿って、チームでコマ撮りする
  • 役割分担:ファシリテーターは撮影に役割分担(監督・演出、カメラのシャッターを押す人、キャラクターを動かす人など)があることは伝えるが、役割を分けるかはチームに任せる。ファシリテーターは学習者全員が参加意識をもてるように見守り、必要に応じて調整する。
  • 撮影中に物語展開やストーリーボードを変更する時:チームで話し合い、時間制作を考慮しながら、変更する/しないを決めるよう、ファシリテーターはアドバイスする。
  • 音入れ(オプション):セリフ、サウンド(環境音、効果音)、音楽を入れるかはチームに決める。時間に余裕があれば、音入れする。所定時間内に終わるように時間管理が重要となる。
  • ⑧上映

撮影が終わったら、全員でアニメを見る。
音入れなしの場合、オプションとして、アニメを映しながら、撮影した学習者がオノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語など)をその場で加えても良い。

  • ⑨ふりかえり

上映後に全員でふりかえりをおこなう。
全体ふりかえり後、できるだけチームに分かれ、全体ふりかえりで得た感想やフィードバックを確認しながら、チームのふりかえりをおこなう。

  • ⑩アニメーションのデータ保存、発表・配信
  • 完成したアニメを動画ファイルに変換して保存する。アプリの機能で自動的に変換できる。
  • 完成したアニメを発表会などで上映したり、動画共有サービス(YouTubeなど)にアップロードして公開する。
  • ⑪参考アニメーション

参考アニメ カメラ横置き、上からの撮影

https://www.youtube.com/watch?v=zcDbLMRpbeI&feature=emb_logo

参考アニメ カメラ立てて置き、横からの撮影

https://www.youtube.com/watch?v=zcDbLMRpbeI&feature=emb_logo

指導のポイント

  • 本練習ワークは、練習ワーク2を踏まえ、知識・情報を物語プロットからストーリーボードにして、一定程度の尺(上映時間)があるをアニメーションにして、発表・配信することを学ぶ実践編です。
  • 全身と五感を使って対象観察と考察をしながら、「なりきる」。アニメで何かを伝えるには、全身と五感で対象の対象を観察し、表層的なあり方や動きだけでなく、裏に隠れていることや内面・気持ちを感じたり、想像しながら、その身体感覚をキャラクター/オブジェクトの動きに置き換えることです
  • 学習者が役者と監督の二役を担います:
    • 役者として、キャラクターを通じて、物語化した課題に参加する
    • 監督として、客観的に物語(課題)を俯瞰しつつ、アニメをつくり上げる
  • 文字偏重から、視覚言語を使って、創造的で多様なコミュニケーションへ:物語つくり、アニメーション撮影、ふりかえりはチームでおこない、話し合いと共同作業でのコミュニケーション力の向上を目指します。
  • 全体の計画を立て、その計画をストーリーボードなどに記録し、チーム全員がシェアしながら、ワークを遂行することで、学習者にチームワークによる時間管理の経験を積ませます。

本ガイダンスは、アニメーテッドラーニングの日本における普及促進を目的とし、一般社団法人アニメーテッドラーニングらぼと文化学園大学 文化・住環境学研究所との共同研究で作成されました。アニメーテッドラーニングの普及促進やその実践のためならば、著作権保持者の許可なくこのガイダンスのコピーや転載ができます。その際は出典(本サイトURL等)と下記のコピーライトを明記してください。

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