実施報告 アニメで、“ひこーき公園の未来図”を描いてみよう!~アニメーテッドラーニング―気候変動とわたしたちのまち~

開催日時:2019年12月26日(木)、27日(金)、2020年1月12日(日)/13時~16時
開催場所 :埼玉県朝霞市 ひこーき公園(南割公園)、弁財市民センター
主催:一般社団法人アニメーテッドラーニングらぼ
協力:朝霞市みどり公園課
助成:平成31年度子どもゆめ基金 子どもの体験活動
葉っぱになったつもりで、地域の自然や文化をアニメで表現しよ はじめよう!アニメーテッドラーニング


チーム世界が発表したアイデアとアニメ『AROUND THE WORLD』>>

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テーマ:ひこーき公園にある「ひこーき」(飛行機型のジャングルジム)でいろいろな場所を見に行く(旅をする)。

チーム四季が発表したアイデアとアニメ『ひこーき公園のみらいの春夏秋冬』>>

【クリックするとYouTubeでアニメーションが視聴できます】

テーマ:25世紀の未来では、動物たちも人間のように過ごしていると思うので、動物たちがひこーき公園で四季を過ごしているところを作った。


実施の背景
朝霞市の通称「ひこーき公園」(街区公園、0.19ha)は、飛行機型のジャングルジムとソメイヨシノが周辺住民や市民に長年親しまれている。しかし樹齢40年を越えたソメイヨシノの多くが病害虫に侵され、気候変動で威力を増す台風の襲来に備えて伐採される可能性が出てきた。
一方、子どもが利用する公園でありながら、子どもがその整備や計画に発言する機会は少ない。
そこで、朝霞市の担当課と協力し、アニメーテッドラーニングのワークショップを実施することとした。

目的
ひこーき公園を利用する子どもが、公園を取り巻く、さまざまな環境に関心を持つ
◆公園の樹木や水循環の観察や考察により、世界規模の気候変動へ視野を広げさせる。
◆子どももまちづくりに参加できることを、子どもたちに認識させる。
アニメーテッドラーニングの普及
◆アニメ制作は身近な道具や材料で、自分たちでもできるということを広める。
◆「スペシャルワールド」(ひとりひとりの楽しい創造空間)を体験してもらう。
◆アニメが自分の意見や考えを他の人に伝えるコミュニケーションのツールとなること、子どもが商業アニメの消費者ではなく、アニメの表現者(創造者)となれることを実感してもらう。
運営全体
◆楽しく、事故のないワークショップを完遂する。
◆学びの部分とアニメ制作部分のファシリテーターの連携により、「学習から物語へ、アニメ表現へ」の工程における日本流アニメーテッドラーニングのあり方を検証する。

対象と募集
ひこーき公園(南割公園)の利用者。主に小学4年生以上の小学生と中学生を対象とした。
親子の参加、近隣市からの参加も可とした。
3日間の参加が望ましいが、2日間のみの参加者も受け付けた。
◆定員:15名程度。
◆参加費:1人200円(3日間の朝霞市ボランティア活動保険加入のため)。
◆募集:公園が通学圏となる朝霞市立第5小学校、第10小学校、第3中学校の小学4年以上の児童生徒全員と児童館にチラシ約2000枚を配布し、公園近隣市掲示板にポスターを掲示した。
◆事前申込:アニメーテッドラーニングらぼのサイトで申込。

参加者
8名、市内の公立小中学校に通学する女子。2名が初日欠席、別の1名が最終日欠席。
内訳:14歳 1名、12歳 1名、11歳 1名、10歳 3名、9歳 2名。
最終日のアニメ上映会には、参加者の保護者と家族、市職員、市議会議員 計20名ほどが参観した。

講師等
【学びと話し合い】
  伊藤裕美(アニメーテッドラーニングらぼ 代表)
  あさかの水と環境のお話ー語り部 藤井由美子(あさか環境市民会議 会長)
【アニメ制作指導】
  いがき けいこ(羊毛フェルト作家、イラストレーター)
  ほそかわ りな(りつや りつこ)(映像作家、イラストレーター)
講師略歴>>
【運営とアニメ制作のアシスタント】 
  平山優花(大学生、12月26日参加)
  佐竹美紀(フリーランス、12月27日と1月12日参加)

全体進行
話し合いやアニメ制作はグループに分かれてチームでおこなう。
1)ひこーき公園の現状を知る。公園でソメイヨシノや植物、そして周辺環境を観察する。
2)ソメイヨシノの特性を学ぶ。持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「住み続けられるまちづくり」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」を知る。
3)現状観察と学習を元に、ひこーき公園の未来図を考え、話し合う。
4)話し合ったアイデアを物語化して、コマ撮りアニメをつくる。
5)完成したアニメをみんなで見て、ふりかえる。
6)「ひこーき公園の未来図」のアイデアとアニメをインターネットで発表する。

制作の機材等
◆撮影用タブレット◆
ハーウェイ製MediaPad T5 10/AGS2-W09/16GB、Android 8.0.0 4台(ネットワーク未接続)
電源はタブレットに各1口(延長コード使用)
◆アプリ◆
コマ撮り Stop Motion Studio 5.3.0.7938(無料版)GooglePlay> AppStore>
ビデオ編集 Microsoft製ビデオエディター(タイトルとアニメ本編とのつなぎ合わせ、エンドクレジットの編集のため、Window10のPCにバンドルされたフリーソフト、画質は劣化するが操作は容易)
◆簡易撮影台◆
ステンレス製メタルシェルフ(写真左) アイリスオオヤマ製SEM-5508(幅約55cm×奥行約35cm×高さ約83cm) 2枚の棚板を約50cmの間隔で設置 ステージとなるA3サイズの白紙 1組
アルミ製三脚と汎用タブレットホルダー(写真右) 2組


◆照明◆
室内の蛍光灯、窓から入る自然光
メタルシェルフには、棚板や支柱の影を減ずるために難燃性不織布のレンジフード用フィルターを周囲に巻いた
◆材料、道具◆
一般的な工作道具、鉛筆、色鉛筆、クレヨン、水性のカラーマーカー
画用紙、A4コピー紙、色紙(大きさと模様が異なる数種)、厚紙、フェルト
ひっつき虫(何度でも貼ってはがせる合成ゴムの接着剤)、マスキングテープ数種


主催者、アニメーテッドラーニングらぼのふりかえり - 目的達成の自己評価

本ワークショップでは、アメリカから帰国した児童がいたチーム世界が公園といろいろな国/世界をつなぐアイデアを出し、チーム四季は動物が人間のように暮らす未来を描いた。ファシリテーターのかなりの助力で、初心者にしては完成度の高い2本が時間内に仕上がった。
1回のワークショップで子どもと大人が互角にまちづくりできるようにはならないが、今回は「アニメ制作という楽しい体験」を通じて、「子どもがまちづくりに参加できる」という意識を、漠然とでも、参加した子どもに持たせられたと考える。

ひこーき公園を利用する子どもが、公園を取り巻く、さまざまな環境に関心を持つ
公園で行った植生や周辺環境の観察と川の環境保全活動家の講話への参加者の反応は好感触であった。
参加者はアニメ制作にも積極的で、地域学校の環境教育との連携を探りたい。
◆公園を取り巻く環境、気候変動というグローバルな課題を掘り下げられるように専門家等との連携
本ワークショップでは、課題への考察を深める教材や学習環境(図書やインターネット検索等)が十分でなく、参加者の興味関心を広げる教材や指導法を、関連分野の専門家等と連携しながら充実させたい。
◆学習や調査の時間確保
限られた時間のため、学習や調査の時間を確保できなかった。アンケート回答より、「気候変動とまちづくり」という社会的課題とアニメ制作の両立は可能と考えられる。アニメ制作の基礎を身に着けた子どもを増やすことで、限られた時間でもアニメ制作を通じて考えを深め、発信できるようにしたい。

アニメーテッドラーニングの普及
参加者全員が「アニメつくりが楽しく」、「またやりたい」とした。「娘が楽しかったと話していた」と、保護者の反響もあった。
身近な道具やアプリでアニメ制作ができることを示し、参加者の一人は冬休みに独りでアニメを作ったとのこと。
アニメーテッドラーニングの「スペシャルワールド」(ひとりひとりの楽しい創造空間)の体験は達成した。

運営全体
楽しく、事故なく実施した。アニメ制作初心者が対象で、申込時に初日と最終日に欠席者がいることが分かり、本ワークショップは「アニメ制作を楽しい体験する」ことを優先した。棄権者はなく、全員が予定どおりに参加した。
反省すべきことは、「学び」から「アニメ制作」への連携が十分でなかったことだ。公園観察と参加者の気づき、そして初日に撮影した写真(各自の着目点)をアニメ計画の話し合いへとつなげられなかった。これは主催者のデザイン不備による。
アニメーション・ファシリテーターはその経験を活かし、熱心に指導したものの、主催者の配慮不足と時間制約のため、ファシリテーターが指示して参加者がそれに従う様子が見られた。
「学習から物語へ、アニメ表現へ」の工程を充実させたい。そのために、次のような指導法の考案を目指す:
◆参加者の創意工夫と協力関係
好奇心や探求心の旺盛な参加者を指示待ちモードにしない。初心者が使い易い機材やアプリを準備した上で、アニメ制作のコツ(基本の基)、使える材料と道具を制作の前に示して、参加者の創意工夫や協力関係を引き出すようにする。
参加者は言葉ではなく、絵を描いたり、体を動かしたりしてアピールすることがある。そのアイデアをアニメというコミュニケーションのツールで表現させるファシリテーションを指向する。
◆参加者の試行錯誤
別のワークショップだが、指導員が少なく目が行き届かなかったものの、高学年の小学生が道具や材料を使いこなし、独自のコマ撮り法を見つけていた。プロのアニメーターが技法・手法を伝授すればアニメの完成度は高まるが、アニメーテッドラーニングでは参加者の試行錯誤―参加者が何を作るかを考え、どのように作るか、どのようにメッセージを伝えるかという工夫をトライアルアンドエラーできるようにする。
◆時間内の完成というプレッシャーから解放
ワークショップには時間制限がある。しかし、アニメ完成というプレッシャーから参加者とファシリテーターを解放させたい。ワークショップの計画で合理的な到達点を話し合い、終了時に到達度合いをふりかえる。参加者が時間管理をしつつ、到達点を徐々に高められるようにする。


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