2018年5月に設立したアニメーテッドラーニングらぼが、ファシリテーター、教育関係者、研究者向けのフォーラムと講習会を日本で初めて開催しました。共催者は、アニメーション教育及びアニメーテッドラーニングの日本での普及に関する共同研究を今年度行っている文化学園大学(造形学部、昼間行雄教授、荒井知恵准教授)、そして社会活動でのアニメーション創作の活用という共通目的を持つ特定非営利活動法人World Theater Project(以下、WTP)。
フォーラム 参加は14名に留まったものの、アニメーション界(研究者、指導者、作家)と学校教育関係者(研究者、教員)が参加。関東圏のみならず名古屋と仙台からも参集くださいました。
デンマークAnimated Learning Lab(アニメーテッドラーニング・ラボ 以下、ALL)の講師2名、臨床発達心理士/学校心理士のゲスト講師、共同研究者がそれぞれの専門分野の研究及び実践を発表し、弊法人が今年度活動と来年度活動予定を報告しました。
フリーディスカッションでは、参加者数名が学校教育及びアニメーションの専門的体験を語り、学習にアニメーション制作を用いることの意義、日本での可能性が活発に議論されました。アンケート回答には、アニメーション制作を通してのコミュニケーションが様々な教育的意味があることを発見したという感想、時間を要す制作には教育現場と連携すべきで協働したいという前向きな提案が寄せられました。昼間教授より、教師の一部はアニメに対し必ずしも好意的でないこと、また保護者の理解が重要であることと指摘されました。
ALLの発表及び回答はデンマークの学校の実例より、カルペ講師が研究中の精神学的教育(Neuroeducation)の見地に立ったアニメーション制作の脳への影響や情動制御(マインドフルネス瞑想)に議論が及ぶことが多かったです。参加者の疑問(授業時間や作業空間の限られる日本の学校教育に対応できるか?他のメディア教育と比べたアニメーテッドラーニング/アニメーションの優位性は?等)に対し、実証を伴った返答が得られたとは言えず、議論が噛み合わないこともありました。その理由の一端は、教材選択や時間割変更の自由度といった彼我の教育制度の違いで、デンマークの教師の裁量権の高さにもあるようです。
ファシリテーター向け講習会 WTPのスタッフメンバーとその活動のサポーターがアニメーテッドラーニングを理解できるよう、初歩的な内容を計画しました。一般参加者も募り、映画に高い関心を持つ社会活動家やその支援者が参加し、アニメーション制作は年齢を問わず交流や自己発現を深めるという感想を得ました。体験制作では、参加者にアニメーションの作家と教育者がおり、他の参加者も映画に関する知識を有すなど、コマ撮り初心者の2時間体験ながら、表現豊かなアニメーションが制作されました。
アニメーテッドラーニングらぼは、デンマークや世界的潮流を取り込みつつ、日本の教育現場や社会的状況、文化習慣に適う日本流アニメーテッドラーニングの開発と普及の必要性を改めて感じ、今後の活動に今回の知見を活かす所存です。
ファシリテーター講習会の参加者が3つのチームに分かれて制作したアニメーション
ハンナ・ペールセンさんとインマ・カルぺさんのプレゼンテーションデータ