ぱらぱらマンガで、動詞を学ぶ
概略
- 本ワークの対象:アニメ制作未経験者・初心者向けのウォームアップです。
- 目的:ぱらぱらマンガで、言葉の学びを深めます。
- ぱらぱらマンガとは、小冊子あるいは小冊子状の紙の1ページ1ページに少しずつ異なる絵を連続して描き、ページを素早くめくると静止画が動いているように見えるもの。「モノが動いて見える/モノが変化して見える」仮現運動によって“動き”を知覚させるアニメーションの手法(映像あそび)の一種で、フリップブック(flip book)とも呼びます。
- ひとつの動きを1ページ1ページ分解することで、「動詞」の動きそのものの理解を深めます。
- はじめは、テンプレートの見本絵をなぞります。
- 次に、学習者が選んだ「動詞」の動きをひとつひとつ考えて小片に描きます。
- 個人活動
- 学習者の対象年齢:主に、小学校4年生以上を想定しています。
指導者向け講習会から生まれた練習ワーク
- 本練習ワークは指導者向け講習会<ぱらぱらマンガで動詞を学ぶ>から生まれました。
- 日本語教員たちと、手書きアニメーターでアニメーテッドラーニングの共同研究者の荒井知恵さんとの対話では、ぱらぱらマンガを日本語指導の教材となる可能性が語られています。
- 「動きのある画にすることで、その言葉の意味をきちんと理解できる。楽しみながら学習できる」
- 「言葉と場面を自分の中で能動的に考えることができる方法」
- 「「伝わるように」と考えることで、客観的な視点から物事を見る訓練になる」
- 「相手に分かりやす表現の仕方を、見る側の身になって考える練習になる」
- 「学習者に描かせることで、本当に理解できたか、確認できる」
- 本ワークの手順は指導者向け講習会向けですので、ファシリテーターが受け持つ授業や活動の時間、諸条件、そして学習者の技能や理解度などに合わせてカスタマイズしてください。
- 本ワークの課題は「動詞」ですが、その他の課題でも学びを深められるでしょう。
- どんな課題なら、ぱらぱらマンガで、学習者が言葉を会得できるか、あるいは別の「コト」を学ぶのに役立つか考えいただけると幸いです。
- ファシリテーターだけでなく、学齢の高い学習者にはアイデア出しさせてもよいでしょう。
道具を準備する<準備するもの>
- 白い紙:1人2、3枚。A4サイズ。ぱらぱらとめくりやすい厚口の紙。例えば厚手のコピー紙、薄くても上質紙のようなハリのある紙(目安は90gsmから、ぶ厚い紙の120gsmくらいまで)。
- 手持ちのプリンターでダウンロード用紙を印刷できる厚さで、予算に応じて選ぶ。
- 学習者の学齢が低く、ブランク用紙の小片に収める作業が難しい時は、官製はがきくらいの厚さ(0.23mm)と大きさ(100mmx148mm)の用紙でも良い。
- gsm(GSM)とは、「Grams per Square Meter」の略で、「g/㎡」と同じ意味。1平方メートル(1m×1m)あたり何グラムかを表したもので、印刷業界では紙の重さ(厚さ)を表す。
- 60gsm~80gsm:一般的な文書のコピーや印刷に適した厚さ。
- 100gsm~150gsm:やや厚めの用紙で、主に表紙やグリーティングカードに適した紙。
- 鉛筆、消しゴム(下書き用):人数分。
- ペン:2色以上の色の異なるペン。線をなぞる作業があるため、細いペンがよい。色塗りをするなら、太いペンや色鉛筆なども準備する。人数分。
- ハサミ、またはカッターと定規
- クリップ:1人1,2個。5㎜くらいの厚みのある紙をしっかりはさんで留められるもの。ダブルクリップ、目玉クリップなど。1人1個準備する。
- ホチキス
- マスキングテープ:冊子を綴じるためで、好きな色や柄を選ぶ。テープがなくても作業は進められます。
- 切り絵の素材(折り紙くらいの薄い紙)、糊:作画ではなく、「切り絵」を用いる場合(ワークの手順⑥)
- スタンプ、シール:作画ではなく、スタンプやシールを用いる場合(ワークの手順⑥)。
- 下絵が描かれたテンプレート(PDF)とブランク用紙(PDF)をダウンロードして、人数分を印刷する。
ワークの手順
- ① テンプレートの「自動詞」をなぞる
- 開始前に、下絵が描かれたテンプレートをダウンロードして人数分印刷しておく。2種のテンプレートがあるため作業時間に応じてAまたはB、あるいはAとB両方でワークする。
- テンプレートの課題(テーマ)は、日本語の動詞から「自動詞」と「他動詞」。
- 「自動詞」と「他動詞」がひとつづきの絵になっている。
- テンプレートA 自動詞:消える、他動詞:消す
- テンプレートB 自動詞:落ちる、他動詞:落とす
本ワークのテンプレート 左)A「消える」と「消す」 右)B「落ちる」と「落とす」
- 最初は、1色のペンで、「自動詞」(濃い点線の下絵―Aの「消える」はロウソク、Bの「落ちる」はボールと台)を01から10まで描く。
- 自動詞と他動詞を別々に描く!
- 本ワークは小学4年生以上の参加者を想定しています。課題とした自動詞と他動詞が1つの絵で構成され、見ようによって自動詞中心の物語、あるいは他動詞中心の物語となります。そのため学習者が自動詞と他動詞の違いを自覚するよう、先に自動詞の絵だけをなぞり、その後他動詞の絵を加えます。
- 参加者の学齢や理解度に応じて、複雑な作業を避けたいなら、自動詞と他動詞を同時になぞっても良いでしょう。
- テンプレートをカスタマイズしよう!
- 本ワークのテンプレートは、ぱらぱらマンガに慣れるように準備しました。それだけでなく、「なにを描くか、アイデアが浮かばない」とか、「作画は苦手」という参加者にテンプレートは救いとなるでしょう。
- ファシリテーターの授業や活動、参加者の学齢や理解度に応じて、テンプレートはカスタマイズしてください。「ブランクシート」をダウンロードしてご利用ください。
- テンプレートの左右の余白!
- プリンターの制約のため、テンプレートを印刷すると用紙の左右に4㎜くらいの余白が生じますが、問題はありません。
- ② テンプレートの小片を切り離す。ぱらぱらめくり、「自動詞」を動かしてみる
- ⾃動詞の絵を描き終えたら、ハサミかカッターをとり、印刷の直線に合わせてテンプレートの⼩⽚を01~10の10枚に切り離す。
- ファシリテーターは事故にも注意する。
- 学習者ができるだけ丁寧に切るように指導する。特に、小片01から05の右端となる中央線はきれいに真っ直ぐ切り離す。
- 上下の余白は捨てる。左右には余白なし。
- 切り離したら、01を⼿前にして10まで⼩⽚を重ねる。手でめくる側となる右側はしっかりと揃える。
- 左側をクリップで仮留めする。
- 右側を揃えたことで左側が不揃いになることもあるが、左側は構わない。
- 左側を左⼿で持ち、右⼿で⼿前の小片からぱらぱらとめくる。左側を重ねてからしならせて、右側にパラパラするための傾斜をつけるとめくりやすい。
- 「自動詞」の絵が動き始める!
- A4サイズの紙は、ぱらぱらしやすい紙を選ぶ!
- ファシリテーターは事前に「ブランク用紙」を準備した紙に印刷してから、小片を切り離してぱらぱらしやすいかどうかを確認しておきましょう。めくりにくければ、別の紙を選ぶようにしましょう。
- ぱらぱらできないと絵が動いて見えず、学習者はがっかりするでしょう。。。
- ③ 「他動詞」をなぞる
- ペンの色を変えて、他動詞(薄い点線の下絵―ロウソクを吹き消す人、ボールを落とす人)を01から10までなぞる。
- 時間の余裕がある学習者は絵を塗ってもよいが、自動詞と他動詞の下絵は塗りつぶさない。
- ④ 小冊子に綴じて、ぱらぱらめくる
- 他動詞の下絵をなぞり終えたら、小片01を手前にして10まで重ね、右側にズレがないように合わせる。
- 左側を2か所ホチキスで止める。左側の線より左寄りのスペースの真ん中近辺を止める。
- マスキングテープで左側をきれいに飾ってもよい。
- 完成したら、ぱらぱらめくる。左側をしならせて、右側にパラパラするための傾斜をつけるとめくりやすい。
プロのコツ―紙片を綴じる、ぱらぱらめくる
- 画像をクリックすると拡大します。
作成:あしたのんき ©︎asitanonki
- 学習者が選ぶ「動詞」でぱらぱらマンガを創作する。
- ⑤ 動詞を選ぶ、発表する
- 学習者それぞれが動詞を選ぶ。
- 初心者は、対を表す動詞なら2つのキャラクター(ヒト、モノ)が登場するため、ストーリーを考えやすい。
- 各人が選んだ動詞を発表する。
- ファシリテーターは学習者が選んだ動詞が課題から外れていないか確認する。
- ⑥ 動詞を元にしたストーリーを考える
- コピー用紙に印刷したブランク用紙で構想を練る。
- ブランク用紙は01から10の小片になっているが、学齢によっては4、6、8枚と小片を減らしてもよい。
- 小片の余りは「表紙」に使える。
- ファシリテーターはストーリー、動詞の展開が思い浮かばない学習者を補助する。
- 絵が上手く描けないなら!
- ●〇や△などの単純な形でもキャラクター(ヒト、モノ)の代用となることを話してみましょう。
- ●動詞を自由に選ぶのではなく、いくつかの動詞あるいは一組の動詞を課題とし、キャラクターとなる切り絵を準備し、ストーリーに沿って切り絵を紙に貼り付けても良いでしょう。
- ●スタンプやシールもキャラクターの代わりになります。
- ⑦ 作画を仕上げる
- 厚めの紙に印刷したブランク用紙に描く。鉛筆で下絵を描く。指定の枚数が描けたら、切り離す。
- 作画前に⼩⽚を切り離すと作業しやすい場合もある!
- 学齢が高い学習者や経験者ならば、作画前に小片を切り離しておくと、小片を重ねてみながら、先に描いた「下の絵」を透かすようにして「上の絵」を描くと、絵の位置や動きの連続性が高まります。
- ただし、切り離す場合は小片の紛失や描く順番(小片の番号)の間違いに気をつけましょう。
- 作画の順序は小片01からで、描いている最中は01、02、03...と下にしましょう。
- 小片を切り離したら、01を手前にして順番に束ね、手でぱらぱらしてみる。
- 期待した動きが現れるか確認する。予想通りでなければ、描き直してもよい。切り絵、スタンプ、シールも同様。
- 下絵ができたら、色ペンで仕上げる。
- 小片が余っていたら「表紙」もつくる。
- 左側の余白!
⼩⽚は「右側」の⽅に作画するようにしましょう。左側に寄せ過ぎると、綴じて見えづらくなります。
左側は小片を綴じるため、左側2cmくらいは作画しないのが良いでしょう。
学齢が低い学習者なら、ファシリテーターが予め各小片の左から2㎝くらいの所に線を引いておきましょう。
- ⑧ 冊子を綴じる
- 小片の01を手前にして順番に重ね、右側にズレがないように合わせる。
- 左側を2か所ホチキスで止める。左側の線より左寄りのスペースの真ん中近辺を止める。
- マスキングテープで左側をきれいに飾ってもよい。
- ⑨ 発表する。ふりかえりをする
- ぱらぱらマンガが完成したら、発表する。
- ぱらぱらマンガは小さいため、学習者の人数が多い場合は小グループに分けて発表させる。
- 発表が終わったら、ふりかえり!
- ●発表者以外の学習者が、「どんな動詞を描いたか」を当てっこする。
- ●発表者以外の学習者に、作画(動詞の分解)のどこが良かったか、動詞の特性が表現されていたかを発言させる。
- ●発表者が、伝えたいコトが伝えられたか振り返る。次はどのようにすると、伝えたいコト(動詞の特性)が伝わるかを発表させる。
- 学習者が課題の理解を深めたかを確認し、「次は、こうしたい」と自ずと思うようなふりかえりを工夫しましょう。
- ファシリテーターは必要に応じて、学習者の発言をフォローし、ストーリーつくりや作画の技術な助言が与えられるようならアドバイスする。
ぱらぱらマンガの参考サイト
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