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実施報告 実践報告:中高生と日本語 X アニメで遊んでみた

実施概要

  • 日 時:2026年2月22日(日曜) 日本時間 午後6時~午後7時40分
  • 場 所:Zoom
  • 参加者:11名(日本、ドイツ、フランス、アゼルバイジャン、スイス、ギリシャ、英国)
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  • 主催者 アニメーテッドラーニングらぼ ひとさん(伊藤裕美)
  • ベルリン日独センターで日本語教師をなさっている、植原久美子さんと梅津由美子さんにご報告していただきます。

植原久美子さんの実践報告

  • 植原久美子:
  • ベルリン日独センターは1985年に日独両政府によって両国の知的交流の場とすることを目的に設立された財団法人。会議、人的交流、展示会やコンサートと並んで、日本語講座も主要事業の一つ。
  • 今回の報告の対象となった中高生クラスの他に、初級1から上級2まで6レベルのクラスが常設されている。
  • 2025年の日本語学習者数は10クラス、約120人だった。
  • 中高生クラス(13歳から18歳)は2025年1月のスタート時12人。
  • 頭の良さそうな、いい子たちだが、なんといってもまだ若い。成長途中の子たちである。おしゃべりが多くて、声が出ない、集中力がない、しっかり聞くことができない傾向だった。
  • 点数や結果をすごく気にして、先生に「合っているか、合っていないか言ってほしい」という感じ。他の生徒がちょっとできると気後れしてしまう。
  • 成人教育講座と違うところは、学校行事などで頻繁に休む。学校の授業優先なので、宿題は出さないし、出してもしてこない。成人教育のように積み上げて上手になるという計画が立てられない。
  • そこで、授業設計の理念に「PDL(心理劇の手法を応用した外国語習得支援法)」を用いた。わたしはPDLを勉強した
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  • PDLの特徴。
  • 「口頭コミュニケーション」が中心である。
  • また、「グループで学ぶ」。
  • さらに、「創造的な活動」と「自分の言葉で学ぶ」ところが特徴的である。
  • ※画像をクリックすると拡大します。
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  • 普通の言語習得では、発音、語彙、文法などの学習事項レベルを注目する。
  • PDLのデフュー先生は、学習事項レベルは氷山の海の上に出た頭であって、「学びに取り組む態度」が水中の見えないところにあり、それが育たないと氷山の上部は出てこない、とする。
  • PDLでは、態度や人間関係に働きかけるアクティビティがたくさんある。
  • 中高生クラスは、自分に自信がない、他のひとと比べる、あるいは集中できないところを成長させる。それを目的として、日本語学習はその手段と考えるように設計した。
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  • PDLで用いる技、手段として3つの要素がある。
  • まずは、「聞く、話す」練習を重視。字よりも先に聞いたり、口を動かすことを中心にする。とはいえ、かなや漢字も導入し、読む練習もする。
  • 次に、教科書の言葉を学ぶのではなく、「自分の言葉で学ぶ」ことを重視する。プレテキストは使うが、教科書は使わない。
  • もうひとつは。「創造性、ひらめき、遊び」を大いに取り入れる。
  • この3つの要素を取り入れて授業設計した。
  • 今回の報告では、授業設計と進行について植原が、同僚の梅津が「アニメを使う」や「絵を使う」には、どのような意味があるかという深い考察を話す。

【1年間の授業内容】

  • 1学期毎に3つの創作活動をした。
  • 創作活動の進め方はいずれも同じだった。
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  • まず、「プレテキスト」がある。それは歌詞や俳句などで、何度も聞く。
  • 最初はサンドイッチと言って、日本語-ドイツ語訳-日本語。意味が分かるようにして、耳から聞く。
  • 何度も聞いてから、「どのようなことが耳に残っている?」と質問し、いろいろな言葉を言わせる。また、「意味も分かる?」と質問し、みんなで意味も言う。
  • だいたい耳に残った頃にシャドーイングをする。先生が発する後を影のように付いていく練習。聞いて直ぐに発するので言える。
  • その後にリピート。リピートは聞いてから間を置いて言うためにシャドーイングより難しい。
  • それらを何回かおこない、できるようになってから初めてテキストを見る。
  • テキストの読み練習をし、群読のように、みんなで読む。最後に歌を歌う。
  • プレテキストの後は、自分たちのイメージを絵に描く。
  • その絵をつなげて、自分が発する音声を入れて、まとめて1つの作品にする。
  • このような流れでおこなった。
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最初が、歌「春が来た」。

  • 家族へのイースターのプレゼント。日本語を習いたいと言えば受講料を出し、送迎をしてサポートしてくれる父母や祖父母などの家族に見せてあげて、とした。
  • 【作品視聴】
  • 動画にはドイツ語をわざと付けていない。
  • 日本語で行ったことを、日本語がわからない家族に説明することは、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の「仲介活動」にあたる。
  • この後は7月の2回目だが、他の活動もした。
  • 国際交流基金のサイトにあるビデオ教材「エリンの日本での高校生活」(「エリンが挑戦!にほんごできます。」)も使っている。

【夏休み前 俳句】

  • 段々と日本語の言葉を使い、日本語を話すのに慣れてから、「自分たちの俳句」を作る活動に入った。
  • 最初に、芭蕉の俳句「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」を朗読する。
  • 全く字を見ず、(先生の発語の直ぐ後に倣う)練習をすると、これくらいはリピートできるようになる。
  • 俳句の意味を理解し、俳句ラップもおこなった。
  • その次に、世界中のあちらこちらに住む子どもたちが自分の俳句を応募する「世界こども俳句コンテスト」のサイトの優秀賞をみんなで読む。英語の説明も読む。
  • 絵がとても素敵で、その絵を見せて、「わたしたちも、このようなのを作ってみよう」と促した。
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  • 「どんなイメージ?」ということで、大きな模造紙に絵を描いたり、自分が言いたいことは日本語でなんと言うのか?、などブレインストーミングした。
  • わたしたちの役割は、その生徒が言いたいこと=日本語をあげる。PDLでは「言葉のチャージ」と呼ぶ。
  • 生徒がイメージしたことを、絵から言語化するようにしてあげる。
  • それから、自分が描いたイメージの中からいくつかを取り出して絵に描く。
  • その絵をひとつの俳句にまとめるのはまだできないため、わたしたちが手伝う。
  • 俳句を作ってから「マジックロールを作ろう」とした。
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  • 左側の「カエル」の絵の学生は出席したので、マジックロールを作った。
    • あめがふる
    • かえるケロケロ
    • みずたまり
  • 真ん中の「顔」の学生は、俳句を作る時に休んだので、マジックロールはこれだけになった。(「寝られない 寝られない 寝られない」と学生の声と一緒にマジックロールの上の紙をくるくるさせる)。
  • 右側の俳句の生徒はマジックロールの日に休んでしまった(笑)。
    • かみなりのあと
    • とりがなく
    • 森の中
  • 他の3人の生徒は俳句を作った日に休んだ。
  • 「かみなり」の俳句を3つに分けて、3人で絵をひとつずつ描いて、1つのマジックロールを作った。

【夏休み後 小さな秋】

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  • 9月、夏休みが終わってから「小さい秋」に入った。
  • 歌詞をリライトして、少し簡単にしたテキストを作成した。
    • 見つけた、見つけた。
    • だれかが、見つけた。
    • 小さい秋、小さい秋、小さい秋、見つけた。
  • 段々増やしていき、最後は質問形にした。
    • 見つけた?見つけた?
    • どんな秋、見つけた?
    • どこで、見つけた?
    • 小さい秋、小さい秋。私たちが見つけた小さい秋。
  • この歌詞を何回もリピーティングしてから、サトーハチロウ作詞の歌詞を読み、意味を確認して、みんなで歌った。
  • 自分が見つけた「小さい秋」を持って来くるようにしたが、生徒は持ってこなかった(笑)
  • わたしと由美子さんは持って行って、「わたしは、こんな秋を見つけたよ」と話した。
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  • 9月下旬~10月に「どんな秋みつけた?」「どこで見つけた?」と、言葉遊びをした。
  • 五感を使って秋を探す。見えるものもあるし、風のように見えないものもある。
  • 生徒たちからいろいろと出てきて、フリップチャートに書き出した。
  • 中には難しい言葉、日本語がわからない言葉もあった。例えば、「雰囲気」のドイツ語はこれで、「ふんいき」が日本語と教えた。
  • 見つけた秋」を短冊型のカードに書き出した。
  • 同時に文法も勉強した。
  • 自分のカードを読む練習。
  • それから、似たような言葉のカードを並べてつなげた。
    • 「ゆうやけをみた」
    • 「くらくなる」
    • 「日がみじかくなる」
  • がつながっているね、というように。
  • みんなで読んで、言葉を足したりもした。いろいろなイメージが出てきた。
  • まとめたカードから、ひとつの物語ができた。それをアニメにしよう、ということにした。
  • まず、1枚の絵を描く。それをコピーし、(一部分を)少し変えるとアニメのようになるとした。
  • わたしたちはアニメのプロでないため、もっと上手くやれる方法があったかも知れないが、簡単にしてやってみた。
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  • このように、「くらくなる」と言う4枚の絵を描いた。
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  • 梅津由美子さん:
  • 色を付けて、最初に絵も足していった
  • 植原:
  • そうすると、ひとつの動き、物語になっていった。
  • 新しい言葉が出るとカードを足し、物語が充実していった。
  • 制作過程で、生徒同士が「わたしとあのひとが書いたカードが同じ」などと並べながら、あるいは先生が「息が白くなったのは、どんな感じ?」などと対話があった。
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  • この生徒は最初「トチの実を見つけた」だけだった。
  • 「どこで見つけたの?」と聞くと、「森で見つけた」とか。「どんな時だった?」と聞くと、「散歩の途中で見つけた」。「その時にトチの実だけでなく、葉っぱも見つけた」とか。
  • あるいは「学校へ行く途中で見つけた」というように、新しい言葉が出てきた。
  • このようなやり取りから言葉が増え、絵を描くことでさらにイメージが膨らむことが見られた。
  • 「学校に行くときは、どんな風に歩くの?」、「友だちと歩くから楽しいな、嬉しいなと歩くのか、それとも今日はテストがあって嫌だなのか、どんな風に歩くの?」と考えさせたら、“靴”が絵の中に登場した。
  • 段々とイメージが膨らんだ。
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  • この生徒は「おちゃをのむ」だけだった。
  • 「どんなお茶?」と聞いたら、「ペパーミントティー」。「コップが青いから、お茶の色が良く分からないね」と言ったら、この青いカップがすごく好きなことが分かった。
  • 由美子さんが「お茶を飲む時は何か食べるよね?」と聞いたら、クッキーが現れた。
  • 描いている内に、湯気が立っている温かいお茶だから、「あたたかい おちゃをのむ」となった。
  • クッキーが段々なくなると、生徒は考えた。最後はクッキーのかけらだけが残る。
  • そこに「いいにおい」とか、「クッキーおいしい」とか、生徒の言葉が豊かに広がっていった。
  • 最後に、みんなの作品をまとめて、ひとつの作品にして読む練習をした。
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  • 最初にPDLの3つの要素を取り出すということを考えた。
  • 結果として見られたのは、まず「自分の声で話す」。アフレコで話した、ということだけでなく、「教科書のことば」で学び、教科書のことばを話したのではなく、「自分のことば、自分の声」で話したということ。
  • そして「自分の言葉で学ぶ」。
  • さらに「遊び」、「創造性」、「ひらめき」ができた。
  • 独りで自己表現したのではなく、グループ内の相互のやり取りが生まれたのが大切と思う。
  • 由美子さんが、わたしたちの活動の意味を深く考察してくれた。
  • 作品を見ていただく。
  • 【小さい秋みつけた 動画再生】
  • アニメを作ってからアフレコ(声の録音)をすれば、もっと生き生きとして言葉が出たと思うが、技術的に上手くいかず、由美子さんにお任せした。
  • アニメ制作は、生徒が絵を描いてから、由美子さんが編集(絵のつなぎ合わせ)し、効果音を加えた。
  • そこに別録した生徒の声を被せた。生徒の言葉で語られた作品になった。

梅津由美子さんの考察

  • 梅津由美子:
  • ひとさんから準備の時に次の問い掛けがあった。
  • 「絵を描くということと、自信を持って何かを表現するということと、何か関連性はあるのか?」
  • 別の言い方をすれば、絵を描くことは、自己(自身)と結びついた言語表現を可能にするか?と言えるのではと、わたしなりに自問した。
  • ここで焦点となるのは、
  • 主体形成
  • アイデンティティ
  • 自己と表現の関係
  • 表現の所有感(ownership of language)、自分の言葉として表現できるということ。
  • これは教育哲学的な問いになると思い、突き詰めた。
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  • 言語学習者と絵の関係をみた場合、「絵」とはどいうものだろうか?
  • 言語以前の自己の表象、つまり直感的に思い浮かべられるもの。
  • 内面にあるものを可視化、自分の内にあるものを見える化する。
  • 自己の外在化、自分自身の問題や感情を「自分とは別の存在」として捉えること。
  • それを再び自己を内在化するための媒体となるもの。
  • 絵は主体形成の装置になっているというのが、問いに対するひとつの可能性である。
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  • 言語が「知識」ではなく、「自己と結びついた表現」になる過程とは何か?を整理すると、
  • オリジナルな表現を使う。
  • 教科書にない語彙を使う。
  • ということではなく、本質的なことは、
  • 言語が経験と接続している。
  • 言語が感情と接続している。
  • 言語が「私の立場」を呈している。
  • 言い換えれば、
  • 言語が“借り物の記号”ではなく、“意味のある声”になっている状態ではないか。

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  • では、「絵」はなぜそこに関わりうるのか?というと、たぶん
  • 絵は単なる活動ではなく、
  • 前言語的自己表象
  • 感覚的経験の構造化
  • 思考の可視化、考えていることを見える化する装置になっているのではないか。
  • そして重要なことは:
  • 絵は「正解」に従属しにくい媒体であると認識すべき。
  • 外国語は常に正誤の評価軸に晒されているが、絵はそうではない。
  • この評価軸から一時的な離脱ができる。自己の立場を立ち上げる余白や余裕を生むことができる。
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  • 理論的な基盤として挙げられることは3つくらい言えると思う。
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  • (1)媒介と内面化
  • 絵は「心理的道具」として、
    • 1.思考を外面化する。
    • 2.それを言語化する。
    • 3.再び内面化する。
  • これはヴィゴツキー(Lev Vygotsky)の理論に沿っているだろう。
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  • (2)二重符号化
  • 絵を描くことは、
    • 1.意味をイメージとして構築する
    • 2.それに言語を重ねる
  • というプロセスを作る。
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  • (3)ナラティブ・アイデンティティ
  • 自己は「語り」によって構築されるという考え方。
  • 絵はしばしば、
    • 記憶とか
    • 感情とか
    • 価値観を
  • 時間構造なしに提示する。
  • それを言語で語る行為は、自己物語の構築そのものである。
  • ここで初めて「自己と結びついた言語」が生まれるのではないだろうか。
  • 見ていただいた(活動や作品の)中に、このようなことが見えていたと思う。
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  • 最終的には、ここまで言えるか分からないが。
  • 絵を媒介にした言語活動は、学習者の主観的立場を可視化し、それを言語化する過程を通じて、私の言葉という自己の言語所有感を高める。
  • ここで重要なのは「所有感」で、話せることではない。
  • これは「私の言葉」と感じられるかどうか。
  • もしかすると、絵は言語を豊かにするだけではなく、
  • 言語に先立つ「自己の感覚」を安定させてくれるものではないか、と考えている。
  • これからもっと突き詰めたい。

【充足感と生徒の成長】

  • 植原:
  • 由美子さんに具体的な例をひとつ話してもらいたい。
  • 由美子さんが、一年間の日本語学習の成果として挙げたことに、「充足感」というのがある。
  • 普通は達成感と良く言う。難しいことができるようになることが成長で、困難を乗り越えて達成感を得るのが成長と言う。
  • わたしたちは1年間の授業で、すごく語彙が増えたとか、難しい文法が分かるようになったとか、それらとは違う成長が見られたと思う。
  • そこで由美子さんが、ここでは達成感というより「充足感」ではないかと言った。
  • そのことを「温かいお茶とクッキー」を描いた生徒を例に話してほしい。
  • 最初、この生徒はどんな様子だったか?
  • 梅津:
  • 入って来た時の年齢は14歳だった。
  • 最初は「ひらがな」を読む練習から始まったが、この生徒は「読めない、読めない、読めない」。次の時間も「まだ読めない」。がんばって、それなにクリアする。次はひらがなを書こうとなると「読めるけど、書けない」。
  • 新しいことになる度に「できない」が先に立つ。
  • ひとの前で声を出すのが非常に苦手な生徒だった。できないと思うから、声が出ない。「できない」言って、涙声になる。
  • 夏休みの後に「わたしの夏休み」の作文を書いた。みんなの前でその作文を発表しようとしても、「できない、できない」と。わたしが「隣の部屋で独りで練習してみる?」と誘ったら、「やってみる」と言って何度も練習した。
  • しばらく経ってから様子を聞くと「練習できた」と言うので、「わたしだけの前で読んでみたら?」と促すと、とても良くできた。「これだけできたら、みんなの前で発表できると」言ったら、その気になって発表した。
  • 「わたしの夏休み」は1年間の授業の最後にプレゼンテーションした。パワーポイントまで作って発表した。
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  • このお茶の話しもそうで、わたしたちとの対話の中で「どんなお茶?」とか質問すると、いろいろなことを話した。
  • お茶と一緒に食べるクッキーが出た時は、わたしはクッキー1つ描くだけと思ったら、「カリッ」「カリッ」と咬んで最後にはくずだけが残るのを見つけて、「そこまでやるの!」と非常に驚いた。
  • 「わたしはやっても、できない」という気持ちが続いたのが、ある時、「できる」と自分の中で生じたと思う。
  • 最後にはプレゼンテーションまでやり、「来年はドイツの学校の勉強が忙しくて日本を続けられないけれど、できたらまた戻りたい」と言っていた、その時の彼女の表情と、プレゼンテーションが非常に充実していた。
  • 自分でできると、準備もしっかりと整えて、持っていたカードを見ずにフリートークした。
  • そういうことをやってのけたのを見ると、この生徒は充実している、充足感を持っていると感じた。
  • 語学力が伸びたかは別の問題だが、彼女にとって達成感というより、「やれた!やった!」という「充足感」が大きかった。
  • これはすごく大事なことだと思う。
  • ひとつひとつ、できない―できたという発達、ヒトとしての発達のプロセスが見えた。それは充足感につながると思う。
  • 植原:
  • PDLにも「学習に対する心構え」として「自他への信頼」がある。
  • 最初全然自信がなかった生徒だが、遊びの中で弾けた瞬間が見えた。
  • 学校生活を話している時に「好きな教科」になり、わたしが「〇〇は難しいよぉ!」と大袈裟な身振りをしながら言って、「こういう風に言って、できないよぉ~とか、大袈裟に言っていいよ」と話したら、ケラケラ笑った。その時に弾けたように思う。
  • 俳句のマジックロール「かみなりの・・・」でも、声が出て、みんなで笑ったり、楽しそうにしていた。
  • 由美子さんに励まされてやっている内に、先生に対する信頼感、信頼関係が生まれた。
  • できないことに囚われずに、今やっていることに集中できる、他の生徒と比較せずに自分ができることをやれば良いという様になった。成長した。
  • 彼女自身の自己アイデンティティ。由美子さんがすごく良い言葉「充足感」と言ってくれた。自分というものが安定して大きくなり、それを感じたと思う。
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  • 自己表現と言ったが、グループでのやり取りがあったことはすごく大きい。ひとりだけが成長したのではない。
  • 教師の役割は、表現活動と言語習得支援。
  • 図の左下は「一人でも考えつく、一人で言える書ける」から出発して、グループ活動だから考えついたり、言いたくなることがある。それをファシリテーターとして引き出すのが教師のひとつの役割だ。
  • もうひとつの役割は、言語教師として、今表現したいこと、本人の意図と言える能力、生徒に合った形で表現できるように、言わせてみて調整したり、支援する。みんなで練習していけば習得できる。
  • ヴィゴツキーの応用だ。

質疑応答、意見交換

  • ひとさん:
  • 久美子さん、由美子さん、どうもありがとうございます。
  • すごく充実した、充足したお話しを伺った。
  • 休憩ははさまずに、ご参加のみなさんからのご質問などをお願いする。
  • HG:
  • ありがとうございます。
  • 最初に聞きたいのは、コースのカリキュラムは事前に提示して、生徒や保護者たちに説明していたのか?
  • 植原:いいえ、していない(笑)。 (梅津さんも首を左右に振る)
  • HG:敢えてしなかったのか?
  • 植原:
  • PDLは学習者が先行して、わたしたち教師は付いていくというフィロソフィーなので、事前に説明していない。
  • このような活動をするということは、頭の中にはあった。
  • 最初に「字を入れる」、「読み方をする」、「(国際交流基金の)「エリン」を使う」というイメージはあった。
  • 梅津:
  • やはり・・・無責任な言い方になるが、「何が出てくるか分からない」という面白さがある。
  • これをやらねばならないと固めると、教科書を使い、教科書に書いてある言葉を覚える形になる。
  • そうではなく、年間プランは大まかにはあるが、それを動かすことで生徒たちがどのように変わるか、どのようにつかむか。冒険と言えば冒険だが。
  • 中高生は休む(笑)。宿題は出さない。「今日やったことを、家で寝る前に繰り返して」というような課題は出すが、提出させる課題は一切しない。
  • いろいろな生徒が集まってくる。生徒たちが共同作業することで何を打ち出してくるかを見ながら「次」を考える。
  • HG:「こういう共同作業が中心になる」ということは最初に言ったのか?
  • 植原、梅津:言っていない。
  • 梅津:
  • 言っていないが、結局そのように、みんなが動いた。
  • 中高生は他の生徒がすごく気になる。
  • 協働することで、「わたしはできない」とか、「あなたより、わたしはダメだ」、「わたしの方ができる」という競争、相手を見て自分の立場を考える見方をしなくなる。
  • そのようなことを気にしなくても良い状況になる。良い意味でグループ活動が作用すると思う。
  • HK:はい、ありがとうございました。
  • NS:
  • ありがとうございました。わたしも中高生を教えている。現場に直結したアイデアだった。
  • 由美子さんの内省は非常に良く分かる。
  • テクニカルな質問がいくつかある。
  • 世界こどもハイクコンテストはJAL(財団)ので良いか?
  • 植原:はい。
  • NS:
  • カードは、4枚の絵を描いた後に言葉のカードを書いていた。
  • 色が違っていたが、色分けに意味はあるのか?
  • 植原、梅津:ない。
  • 植原:
  • その辺にある紙を切って渡しただけ。
  • 漢字の授業では漢字に合わせて紙の色を変えることはしたが、秋の俳句は色分けしなかった。
  • NS:
  • 文型や言葉で分けたのかな?と思って質問した。
  • 次に、グループ活動について。わたしも絵を描くグループ活動をしている。
  • (絵を描くことを)活動の最終でなく、中盤に入れることで、生徒同士の評価活動や内省活動になると、実体験としてある。
  • ドイツには政治政策「民主的シティズンシップ教育」の「ログブック(Logbuch)」がある。中高生のための政治教育のテキストで、わたしは日本語にして使っている。その中に「絵を描く」ことがある。
  • わたしの経験から、由美子さんが仰った「絵を媒介にした言語活動は、学習者の主観的立場を可視化する」ということが本当に分かる、実感できる。
  • また、「言語に先立つ「自己の感覚」」についても、自己の感覚を表出していると思う。
  • 高校生に「民主主義という機械(マシーン)を描く」というテーマを出した。彼らはいろいろと描き、自分が言いたいことを表現した。このことから、絵とは自分の言葉では言えなくとも、絵で描けて、自分の感覚が入っている。
  • 由美子さんのまとめを伺い、なるほどと同感する。
  • KYさん:
  • 興味深くお話しを伺った。わたしはアニメーション制作をしている。参加者と相互的にやり取りしながら作品を作っていくのが興味深い。
  • 最初のアイデア出しから作品にするまでに、どのくらいの時間を掛けたか?
  • 植原:
  • 最初の「春」はどのくらいだったか・・・休みもあったし・・・(1月授業開始で)3月の始めに歌を始めて絵を描き、1か月くらい掛かった。
  • 2回目(俳句)の方が短かった。3週間くらい、1か月は掛けなかった。
  • 最後は一番長く掛けた。人数が少なく、言葉数が多かったので3ヵ月くらい。しかし、平行して「私の夏休み」のプレゼンもおこない、そちらの方が時間が掛かった。
  • 活動をどのように進めるかは、わたしたちの中ではっきりしたイメージがあった。ステップは厳密に考えて設計した。
  • ひとさん:
  • 補足すると、「小さい秋」は動いているように編集されているが、授業時間に収まらなかったとことと、生徒の出席が減ったことで、絵は生徒が描き、由美子さんが絵のつなぎ合わせと効果音を付けてまとめた。
  • コマ撮りに必要な絵の構成は(生徒によって)できていたので、アニメっぽく見せることができた。
  • 梅津:
  • 最後まで(生徒の手で)できたら良いと思う。
  • (生徒にさせるには)無理な状況が見えていたので、「ここまではやりましょう」とした。
  • 最後の動画作成はできなかった。
  • NS:動画の話題になったので、わたしは動画のテクニックがないが、どのようにテロップを画面に入れたのか?
  • わたしはできないため、「このようにしてくれ」とお願いした。
  • やり方を教えてもらおうとしたが、時間が間に合わず、知り合いの若者にやってくれた。
  • やり方は教えてもらうつもりだ。
  • ひとさん:
  • コマ撮りのテクニカルな質問だが、みなさんが自分でやろうと思わないでほしい。中高生や大学生の方が知っている。
  • 小学生でもYouTubeなどをやっている。自分でやろうとしたら授業が進まない。
  • 絵を描いたら、「自分でつなげてらっしゃい(アニメにする)」と言えば、作ってくるだろう。
  • 音楽、サウンドを指示しなくても、生徒が「こういう効果音があった方が良い」と言ってくる。アイデアを持っている。
  • AK:
  • アニメ制作の研究ではなく、主に高校でアニメを使って国語の能力、書くことなどの力を伸ばす研究をしている。
  • ひとさん:美術教育としてか?
  • AK:
  • 美術教育ではない。
  • 例えば、アニメの画面の奥にある意味は何か?を考える、それを考えながら読んだり、書くことにつなげようとしている。
  • ひとさん:既にできている動画を見て、解釈するのか?
  • AK:そうだ。例えば、ジブリのアニメなどを使う。
  • ひとさん:
  • 質疑応答をしていただいたが、「こんなことをやってみたい」なども伺いたい。
  • 「なんでアニメなのか?」と、をいつも考えながらやっていると、久美子さんと由美子さんとの打ち合わせで伺ったが、どうしてそう考えるのか?と逆に思った。
  • お茶とクッキーの生徒とのやり取りで、絵を描くためには、「お茶」から派生して、どんなお茶?、どんなカップに入っているか?、冷たいか?温かいか?、周りはどのような背景か?
  • また、「クッキーを食べる」というヒントを出すと、生徒がクッキーを食べる、クッキーがなくなるという時間経過を自然に表現する。時間軸があるアニメーションの考え方が入っている。
  • クッキーも、どんな?と、チョコチップが入っている?、大きい?小さい?、ひとつ?というやり取りをした上で、4枚の絵が描かれた。
  • どうしてアニメか?と考えずとも、ここに自然な対話が生じる、素晴らしい授業になっている。
  • みなさんも授業で生徒と、そのようなやり取りをされていると思う。
  • 絵を使ったり、アニメを作らせている方はいらっしゃるか?
  • YT:
  • 大学の漢字の授業、中級と中上級のクラスで、新しい漢字を使う作文を書くと、作文が苦手な学生がいる。絵を描く学生もいる。
  • わたしが疑問に思うことなどを突っ込んで聞いていくと、どんどん絵が足されて、それから言語化すると(作文が)書きやすいようだ。
  • そこから生まれるものがあると思う。
  • ひとさん:ひとつの漢字か?文章中の漢字か?
  • YT:
  • 新しい漢字が12ほどあり、語彙がいくつか出ている。それを使って、自分が思いついたこと、イメージすることを作文にする。悩んでいると、自然に絵を描き出す学生がいた。
  • 絵が苦手な学生もいたが、話しながらどんどん進んだ。
  • ひとさん:絵を描いてと指示したのではなく、自然に学生が書き出した?
  • YT:
  • わたしが、絵を描いてから作文を書いても良いし、直接作文にしても良いとした。自由に時間を与えて、無理なく書いて良いとした。
  • 絵を描ける学生は喜んで描く。
  • ひとさん:
  • 得意なひとは描くだろう。久美子さんと由美子さんの授業でも、ブレスト紙にイラストが描かれていた。
  • カエルの絵は自然に描かれたかな、と思った。
  • NY:
  • いろいろと考えさせられて頭の中でグルグル回っている。
  • 紙芝居など、絵を描かせることが多い。その効果を常に考えている。
  • グループで話しを作りながら絵を描くと、創造力が広がる、お互いにコミュニケーションして楽しい、というような効果は感じている。また、発表できる。
  • 周りにシェアするために、絵もコミュニケーション手段として効果的に使えたら?という感じだった。
  • それが何を意味するか?と、深いところまで考え付かなかった。
  • 今回のお話しから、感情や記憶を考えると、音から入り言語に移るのは、人間の右脳と左脳を行ったり来たりしていることが見えた。
  • 教師との対話が加わると、ひとつひとつの言葉や表現が、その時の感情や場と結び合う、記憶に残る活動と感じた。
  • 由美子さんのふりかえりに「充足感があった」というのは、すごく良い表現だと思う。
  • 左脳で言葉だけを覚えていると、ある種の達成感はあるが、「充足感」は周りとコミュニケーションして、自分なりの発見や、つながることによる喜びや満足感。
  • いろいろな活動で脳がフル活動する、自然な生活の流れで、ひととつながり、自分が学ぶというのを上手くクラスに取り入れていると感動した。
  • 絵を描くと楽しいかな?と、深く考えずにやってきた。
  • クラス内にレベル差があり、お話し作りでも自分は面白いと話しても、相手がどこまで理解しているか分からない。
  • 絵は、解釈の違いは合っても、言葉では伝えられないことも伝えられる。
  • 流れが素晴らしいと思った。わたしも流れを考えながら、計画を立てて、自分の中にフレームを持つ。
  • そうすれば、何が出て来ても、上手くはめられるだろうと思った。
  • KM:
  • 最近は、学習者と散歩して、途中で写真を撮りまくり、教室に戻って、写真を1枚選んで絵を描く活動をしている。
  • その絵に日本語で、注釈でも何でも良いのでコメントを付ける。時間があれば、自分の母語へ翻訳した。
  • それを「展覧会」にした。
  • この活動を始めた切っ掛けを説明する。
  • 本日出た「充足感」、「自分が話せる言葉とは異なる言葉を獲得する」ということに目を向けてもらうのが、自分の学習者に対して気になっていた。
  • 現在働いている国の初等教育や中等教育の学校で、校長先生の考えが強く反映される。
  • 学習者がそれまでに受けた教育によって、絵を描かせるときれいな絵を描く。
  • しかし、それではダメで、「いつも通っている道で、変なものを見つけた」というように、アンテナの張り方、自分の外にあることに目を向けて欲しいと思ったから、この活動をしている。
  • 今の寒いので、暖かくなったら再開する。
  • 絵でも、上手な学生はチャッチャと描く。他の学生がそれを見て、自分のは下手な絵というように比べてがっかりする。
  • それなので、「写真」を写せば、絵が下手な学生でも描きやすくなる。
  • 今日の話を聞いて、今後は描いた絵を動かす、自分でセリフを言うなどすれば、もっと生き生きすると思う。
  • ひとさん:写真撮影して、その絵を描くのか?
  • KM:学生は全員、スマホの写真を見ながら描いている。
  • ひとさん:
  • 写真を撮るのがミソだと思う。絵が上手いひとはさっさと描く。わたしのように、絵が下手だと絵を描くのは嫌だ。
  • 何かを写す、真似するのなら、できると思わせるのは良い手だ。
  • 市川先生は、どこかに呼ばれて行って「Feel度Walk」を行う。おじちゃん、おばちゃん、子ども、いろいろなひとたちが「なにか面白そうなことをやるから」と集まる。
  • 写真を撮ると、自分が意図したモノでないモノが写ることがある。イラストにする時に、「こんなのが写ってる」と発見がある。
  • それで何回も感動したと、市川先生は仰っている。
  • わたしは3回しかやっておらず、そこまで達していない。継続的にやりたいと、おふたりの発表を聞きながら思った。
  • ひとさん:
  • EAさんはどうか?オンライン授業をされているため、対面で絵を描くのはやり難いと思うが、どう考えるか?
  • EA:
  • 本当に面白かった。素敵なアイデアをたくさんもらった。
  • ひとさんから話しを聞いて、自分でもやってみたが、まだまだだ。
  • オンラインで初心者向けの1対1授業のため、まだ早いと思った。
  • また、今日の話しを聞いて、生徒に出すヒントが足りなかったかもと思った。
  • グループワークにする方が楽しいだろう。1対1でなく、ミニワークショップをしてみたい。
  • 準備として、マジックロール(くるくるアニメ)を漢字の勉強のために作ってみた。
ALLjp_中高生とアニメで遊んでみた yumiko&kumiko
ALLjp_中高生とアニメで遊んでみた yumiko&kumiko
  • これだけでなく、簡単な文法や語彙。
  • 「かぶる」、「着る」など、たくさん描いて生徒に見せたら、みんな喜んだ。
  • 1回だけ行ったが、その後が困っている。
  • マジックロールを1回して、授業後にGIFアニメを出してもらったが、その後が困っている。
  • モテベーションを上げるために、どうすれば良いか困っていたが、今日の話しからアイデアをいただいた。
ALLjp_中高生とアニメで遊んでみた yumiko&kumiko
  • ひとさん:
  • EAさんが描かれたモノを真似してもらったら、どうだろう?
  • 絵が苦手なひとにマジックロールを作ってと言えば、嫌だと思うだろう。
  • 絵が得意なら、ヒントから自分でいろいろ考えて作るだろう。
  • 1対1でさせると難しいかも知れない。グループなら、得意・不得意で助け合うだろう。絵を全員が描かなくて良い。
  • NB:
  • EAさんの授業は絵を活用されている。絵の関わりがあれば良いと思う。
  • 時々マジックロールをしたら、好きな生徒もいるだろう。
  • そういうことができると分かれば、生徒が自分でやってみようと思うかも知れない。
  • 今やらねばならないということではないだろう。
  • 12月にベルリンで久美子さんと由美子さんの生徒の発表を対面で見た。夏休みの発表では、日本語で質問したら、生徒が答えた。その生徒が恥ずかしがり屋だとは思わなかった。
  • 日本語の授業が、その生徒の人生を変えたのかなと、今日の話しを聞いて思う。
  • 学校教育で縮こまっていたのが、日本語の授業で、「他の学び方がある」と分かったのだろう。生徒の今後の人生が楽しみだ。
  • 今日のテーマは絵やアニメだが、KMさんの写真と絵、久美子さんと由美子さんの絵と文章、あるいは紙芝居などと、自己表現にはいろいろなやり方があると、(日本語の授業で)見せてあげるのがすごく良い。
  • ひとさん:他の学び方があると分かれば、追い詰められなくて良いだろう。
  • 植原:
  • AIが普及し、同時通訳がいらなくなるような高性能のAIが年内に出るかもと、最近聞いた。
  • 日本語教育の世界でも、AIの時代になれば外国語教育は要らなくなるのでは?と言われている。
  • しかし、AIの言葉は記号としての言葉。これを翻訳して、というように成果物を出すのは早いが、それは「わたしの言葉」ではないと思う。
  • 外国語教育も、正確で正しい日本語をできるひとを育てることが目標ではなくなるだろう。では、なにをすべきか?
  • AIとわたしたち人間が違うところは、わたしたちは身体を持っている。毎日いろいろなことを体験している。身体を使いながら、いろいろなことを経験する。
  • KMさんの「知図」で写真を撮ると、日々体験し、気づかなかったこと写真を見て分かる、とか。
  • NYさんが仰るように、左脳と右脳をいろいろ使いながら生きている。
  • わたしたちが言語を使う能力は、AIのものとは全然違うと思う。
  • 由美子さんが発表したように、「わたしの自己」はナラティブによって構築される。由美子さんからそれを聞いて、が~んと殴られたようだった。
  • 自己を形成する上で言語は大切だ。言語を習得するとは、言語という成果物を正しくすることではなく、「わたし」という人間を形成するために言語教育がある。
  • 「わたし」を形成する言語は、それを形成する過程で、絵など、いろいろな体験と言語はつながる。いろいろなモノをつなげながら、人間の成長を支援することが、わたしたち(言語教育者)の使命になると思う。
  • 記号接地論によると、AIは体がないために記号が接地していない、世界とくっついていない、人間の言葉は身体を通じた経験・体験と接地している。「接地」を促し、人間を豊かにすると、このような活動をすることで具体的に考えられるようになった。
  • みなさんのお考えを聞きたい。
  • HK:
  • AIは体を持っていないから記号接地していない。例えば、レモンは酸っぱいという知識はあるが、酸っぱい経験をしていないと、今井むつみ先生も仰った。それが言われてから3年くらい経つ。フィジカルAIが出現した。AIも記号接地できるという考え方。
  • これができない、これができないと言うと、エンジニアはやってやろうと開発する。
  • 植原:
  • AIは動くことはできるようになった。わたしたちの目標は人間。人間はずっと存在する。
  • いつまで外国語教師の需要があるかな?と、確かに思う。
  • HK:
  • 需要ななくならない。言語の需要がある限り、なくならない。日本語が要らないとなれば、日本語教師はなくなる。
  • 植原:
  • 今は日本語の文化に魅力を感じてもらえている。日本語を通じて、日本の文化を知りたいとか、日本人と友だちになりたいという気持ちを持っている。
  • ひとさん:KYさん、分野が違う話しだったかも知れないが、どうだったか?
  • KY:
  • わたしは作品を創り、それを見てもらうという、ある意味一方通行の感じで制作している。アニメ制作が目的。
  • みなさんは、アニメ制作を日本語学習という目的のためのツールとして役立たせる。言語学習以外でも、なにかのために役立たせる、ツールとしてのアニメーションという発想がなかった。面白かった。

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